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介護の基礎知識

【セルフチェックリストつき】介護うつは改善や回避ができるうつ病!

「介護うつ」をご存知ですか?
介護うつとは、その言葉どおり「介護を原因とするうつ症状」のことです。

介護うつは、本人や周りの人が気づきにくいうつ病で、発症すると治るまでに時間がかかるといわれる深刻な病気です。そのため介護うつにならないためにも、介護うつに対する正しい知識を持って予防と対策を講じる必要があります。

この記事では介護うつの

  • 症状
  • 介護うつになりやすいタイプ
  • 治療法
  • 回避策

など分かりやすく説明します。
この記事を読めば、介護うつについて理解し、早期から対策ができるでしょう。

※当該記事に関する個別のお問い合わせは受け付けておりません。また、記事中の触れられている法的見解についての責任は一切負いかねます。所管の自治体窓口または弁護士等の専門家にご相談下さい。「そよ風」のサービスに関してのお問い合わせや不明点は、お問い合わせフォームより受け付けております。

1.介護うつは改善や回避が期待できるうつ病

介護うつとは介護者が、介護を通しての不安やストレスが原因となり発症するうつ病のことです。身体だけでなく精神的な負担や責任、使命感も強いられることで日々の負担が蓄積し介護うつになってしまいます。

でも、悲観することはありません。
うつ病の中でも、介護うつは改善や回避できる可能性が高いうつ病と言われているからです。

介護うつは介護という負担からのストレスやプレッシャーが主な原因のため、「一人で抱え込まない介護の状況を作ること」が最善の治療策だと言えます。

原因が明確だからこそ、その原因を取り除き負担軽減をすることで、症状の緩和や改善、回避ができる可能性があるのです。

2.日頃からの変化に注意が必要!介護うつの具体的な症状とは

では、介護うつになるとどのような症状が現れるのでしょうか。
以下は、介護うつになると現れる主な症状となります。

  • 慢性的な疲れや倦怠感
  • 無気力、無表情
  • 神経質
  • 食欲不振
  • 不眠症
  • 引きこもり
  • 気分の落ち込み
  • 自殺願望

介護者にこれらの症状が2週間以上続くと、介護うつの可能性が高いと考えられます。

介護うつは本人も周囲の人も、疲れているだけかな?と気づきにくく、知らないうちに病状が進行してしまうことが多いので、周囲も日頃からの変化に注意が必要です。

3.介護うつのセルフチェックをしてみよう!

介護者本人は不調や変化を隠そうとする傾向があるので、周りの気づきが介護うつの早期発見のカギになります。診断チェックシートで、今のご自分(介護者)の状況をセルフチェックしてみましょう。

本人だけでなく、ぜひご家族も客観的に介護者の方の状況をチェックしてみてください。早期発見への気づきとなるかもしれません。

セルフチェックのポイントは、以前は問題なく出来たことが最近出来なくなったり、やりたくなくなったりという明らかな気力と体調の変化を感じていることをチェックしてください。

<チェック項目> あてはまるものをすべて数えて下さい

・物ごとを決めることや選ぶことが以前より難しくなった
・周りから疲れているようだと受診を勧められることが増えた
・介護することにうんざりし、みじめになり悲しくなる
・何ごとにも興味を失い、何も楽しむことができなくなった
・食べ物に興味がなくなり、何を食べても美味しくなく食欲がなくなり、体重が減った
・落ち着きがなくなり、 イライラし怒りやすくなった
・なぜ、私だけが・・・と自分の状況は、報われなく悲しい
・疲れやすく、重く抜けない疲労感を感じる
・まわりの人や世の中のニュースに興味がなくなった
・頭痛や肩こりがひどくなった
・自分が役に立たない存在で、ひどくみじめで不幸せに感じる
・何に対しても集中できない。持続できない
・他の人との関わりを避け、誰とも会いたくない
・死んで、もうこの世からいなくなりたいと思う
・下痢や腹痛、動悸やめまいなど原因不明の体調不良が続いている
・朝起きるときに、特に気分の落ち込みがひどい
・身だしなみに気を使わなくなった(同じ服ばかり着ている)
・寝つきが悪く、熟睡できなくなった
・自分に自信がなくなり、全てに消極的でネガティブ思考になった
・急に悲しくなり、感情が抑えきれずに場を選ばず涙が出てしまう

上記の項目で、4つ以上にチェックされた方は介護うつを疑ってみてください。

また思い当たるチェックが多ければ多いほど、早急な対処が必要です。一人で解決策を考えるのではなく、専門家の意見を聞きに受診をすることも次のステップに繋がります。

自分や介護している家族の変化やストレスの状況を把握するのは大切なことです。周囲も介護者の変化に気づき、介護うつのシグナルを見逃さないでください。

次に介護うつになりやすい人とは、どんなタイプの人なのかご紹介します。

4.介護うつになりやすい8タイプ

介護うつは介護の負担が大きい人ほどなりやすいものですが、特に次にあげるタイプの人たちは注意をしましょう。

■責任感が強いタイプ

このタイプの方は、人に頼ったり甘えることが苦手な方に多いです。自分の家族の介護は、家族(自分)が頑張らなくてはという強い考えを持っています。疲れたり、体調が悪くなっても、自分が最後までやろうとセーブできず抱え込んでしまいます。

■真面目で几帳面なタイプ

このタイプの方は、きちんと出来ない自分を強く責めて落ち込むことが多いようです。真面目で几帳面な人は、家族の介護に対しても真剣で、きちんとしっかりこなそうと頑張ります。自分のことよりも介護を優先させてしまい、その反動でストレスを溜め込みやすくなります。

■完璧主義タイプ

このタイプの方は、自分に厳しく、高いハードルを設定しがちな傾向があります。自分に厳しいので、中途半端やいい加減、手抜きをすることを許しません。介護に対しても、理想を追い実現するために、遊びを持たず自分自身を追い詰めてしまいます。相手が勝手だったり、わがままを言ったりして思い通りにならないとイラつきストレスを感じてしまいます。

■気が弱く、精神に弱いタイプ

このタイプの方は、周囲の目や反応を気にして自信を持てなくなるようです。一生懸命、介護をしても感謝してくれず、拒否されたり暴言やいやみを言われると、気分が落ち込み、空しさといつまで続くか分からない介護への不安や孤独、絶望感を感じてしまいます。職場でも、介護で休んだり早退すると上司や同僚に負い目を感じてストレスにつながります。

■経済的に不安なタイプ

このタイプの方は、金銭的に余裕のない生活で考え方が卑屈になり常に先の不安を抱えています。金銭的な余裕がないと、介護サービスを利用したり選択肢も少なくなり、すべて自分で負うしかなくなります。介護離職する方は、収入減になり経済的な負担で生活が困窮していき、社会とも疎遠となり精神的な不安は大きくなるでしょう。

■身体が弱く、いつも体調不良なタイプ

このタイプの方は、いつも体調が優れないため自信も持てず、考え方もネガティブになります。介護は日常的に体力が必要で、介護者にかかる肉体的負担は大きなものになります。仕事をしている場合、過労による介護疲れからの体調不良がうつ病を引き起こすことがあります。

■孤独で抱え込むタイプ

このタイプの方は、誰にも相談することや弱音を吐くことができず、他人に頼ることに罪悪感を持つ傾向があります。介護を分担したり、相談したりできる相手がいなければ、介護を一人で抱え込んで、負担は一人に集中してしまい、介護者は一人で思い詰め、周囲も自分も気付かないうちにうつ病が進行してしまいます。

■頑張りすぎて燃え尽きるタイプ

このタイプの方は、何でも自分でと気合が入りすぎて、自分の力を過信してしまいます。無理をして頑張りすぎて限界に達し、ある日やる気を失ってしまいます。燃え尽き症候群とも呼ばれ、何もかも嫌になり極端に無気力に脱力状態になり、現状への不満や怒りが強くなり、介護放棄にもつながります。介護中にも起こりますが、介護する方が亡くなった後に発症するケースもあります。

あなたにあてはまるタイプはありましたか?あてはまるタイプがあった方は、その傾向を自覚し他人ごとではなく、自分にも介護うつになる要素や可能性が秘められていると認識しておくと、変化を感じた際に早期発見につながります。

5.介護うつの治療法は3種類

自覚して注意をしていても、介護うつになってしまったらどうすれば良いのでしょうか。

主な介護うつの治療法としては、

  • 薬物療法
  • 精神療法
  • 休養(レスパイト)

の3種類があります。

薬物療法

薬物療法は、抗うつ剤を使って、気持ちの落ち込みを薬でおさえます。抗うつ剤は効果が出るまでには2~3週間以上かかるのが一般的で、治療すればすぐに治療の効果が表れるというものではないので焦らず効果を確認してゆく必要があります。

■精神療法

精神療法は専門医によるカウンセリングなどで原因を探り、取り除く方法を見出していきます。精神療法は、主に再発予防の治療となります。再発しないように、思考や行動を見直していきます。

■休養(レスパイト)

休養は、介護から離れる時間を作ることで治療します。介護サービスのショートステイなどのレスパイトケアを活用し、介護から離れる時間を作りながら介護者の休息やリフレッシュを図ります。今後も介護を続けるためにも介護者がしっかりと休み、心身ともに休養し回復することが重要です。

レスパイトケアについては詳しくはこちらの記事をご覧ください「介護疲れを癒すレスパイトケア!タイプ別におすすめサービスを解説」

以上3つが主な治療法となりますが、複数の治療法を並行して行う場合もあります。

治療や薬は自己判断でやめてはいけない

介護うつは治療をすればすぐに回復するというものではなく、治療の過程でも良くなったり悪くなったりと反復しながら、ゆっくりと階段を上るように改善していきます。

この時注意したいのは「回復したと思っても自分の判断で薬や治療は勝手に止めない」ということです。

まだ完治しているわけでもないのに少しでも回復傾向に向かうと、もう大丈夫だと通院や薬を自己判断で早々に止めてしまう方が多いようです。その結果あと一歩という状況まで来たのに再発し、逆戻りしてしまう方が少なくありません。

薬を止めたり減らすタイミングは、自己判断せずに必ず主治医の指示に従うようにしましょう。早く通院や薬の服用を止めたいとは思いますが、根気強く再発予防期を過ごすことが大切です。

6.介護うつにならないための5つの回避策

第1章で介護うつは回避ができる可能性が高いうつ病であると書きましたが、本章で具体的な回避策を5つほどご紹介します。

回避策1:家族や周囲の理解と協力を得る

介護は介護者が多いほど楽になります。家族や兄弟姉妹はもちろん、親戚や近隣の方など皆とできることは分担しましょう。皆が自分のできる力を持ち寄って、分担し協力しあうことが大切です。そのためには自らが歩み出し連絡を取り、素直に頼らなければいけません。

回避策2:気軽に話や相談ができる相手(同志)を増やす

高齢化が進み、多くのご家庭が介護の悩みを抱えるようになったので、一人で抱え込まず、同じ悩みを持つ仲間を作りましょう。

  • 各地域や市区町村主催の介護の「家族の会」や「介護講習会」
  • 社会福祉法人やNPO団体などが運営する「認知症カフェ」

など各地域で介護相談や勉強会、地域交流などが行われておりますので、定期参加して同じ悩みを持つ方々と交流してみましょう。なお開催情報を知りたい方は、市区町村の福祉課や地域包括支援センターなどに問い合わせしてみてください。

回避策3:介護の最新情報を集めて知識を持つ

正しい知識と新しい情報は、介護うつを乗り越える力や武器となります。新聞や週刊誌をはじめ、インターネットでも認知症や介護についての最新情報を得ることができます。便利なサービスや、利用できる制度を活用して経済的な援助が受けられたりするほか、ストレスや悩みの対処法も分かるかもしれません。

回避策4:旅行に行ったり趣味を持ったり、自分の生きがいや楽しみを持つ

一生懸命頑張りすぎて、自分の生活や楽しみを犠牲にしてはいけません。他の人に介護を代わってもらい、ショッピングや旅行に出てみたり、何か好きな趣味をつくりそれに集中するのも良いでしょう。

時には自分自身を開放しリフレッシュさせて、上手に気持ちをリセットするようにしましょう。最近は、ひとりでも参加できるツアーも増えています。思い立ったら気分転換に利用してみてはいかがでしょうか?

<参考URL>クラブツーリズム「ひとり旅」

回避策5:介護サービスを上手に利用する

介護は、介護のプロの力を借りることも時には必要です。どんなに家族で交代や分担しても基本的に介護できる頭数は増えません。介護保険で使えるサービスの利用も担当のケアマネジャーに要望を伝え上手に利用し、休息を図るようにしましょう。

<介護保険適用で利用できる主なサービス>

  • 送迎して日中預かり、入浴や食事のサービスをしてくれる通所介護(デイサービス)
  • 冠婚葬祭や入院、旅行などで1日~30日まで利用できる短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 自宅にヘルパーが来てくれて食事や入浴介助などを行ってくれる訪問介護(ホームヘルパー)

など

このような介護のプロのサービスの力を借りて、介護から離れる時間を積極的にとることで、リフレッシュする時間を計画的に作リ出すことが可能になります。

※私たちが運営する「そよ風」では、上記に記載がある介護サービスの他、様々な介護保険サービスを展開しております。ぜひ一度公式サイトをご覧ください。

7.家族を介護うつにしないためにできること

家族を介護うつにさせないための重要なことは、介護を一人で抱え込ませず、自分自身を追い込ませないような環境にしてあげることです。たとえば、以下のようなことが気をつけるポイントとなります。

  • 家族の一人に介護の責任や負担が集中しないように配慮する。
  • 介護者が頑張りすぎて無理をしていると感じた時に、家族にSOSサインをいつでも出せる関係と体制を準備しておく。
  • 他人事でなくいつも寄り添い見守る。
  • 介護うつの疑いにより受診をする状況になったら、在宅介護の限界と捉え施設入所を検討する。
  • 介護者への声掛けは日ごろからマメに「〇〇だよね、(貴方は)どう思う?」と相手の答えを引き出すような会話を心がける。

もし、介護者の変調が見られたり、SOSサインが発せられたら、慌てることなく準備していた情報でレスパイトケアとなる介護サービス等を活用して、介護者の負担や気持ちを軽くし、気兼ねなく速やかに今の介護から離れられる状況を準備してあげることが重要です。

8.さいごに

介護者の一番大切な役目は、介護される方の支えとなることです。ただ、介護というものはその状況や環境の変化によってさまざまな問題に直面します。

その1つに介護者が介護を続けられなくなる深刻な問題である「介護うつ」にさせないためにも、日ごろからの周囲の関わりや気づきが大切なのです。

大変なことが分かっているのに手を差しのべず、問題を回避して話し合いを後回しにしたり、避けて遠目に見るように接したりせずに、家族や周囲は寄り添い悩み、温かく一緒に介護生活を支えてあげることが大切です。

周囲の支えと、介護サービスを上手に利用し、もし介護者の様子がおかしいと感じられた際にはためらわずにまずは早期受診をすすめ、それ以上重症になる前に介護者を守り、今後の介護生活を安心して送れる環境を共に考えてあげるように見守ってほしいと思います。

※当該記事に関する個別のお問い合わせは受け付けておりません。また、記事中の触れられている法的見解についての責任は一切負いかねます。所管の自治体窓口または弁護士等の専門家にご相談下さい。「そよ風」のサービスに関してのお問い合わせや不明点は、お問い合わせフォームより受け付けております。

私たちは全国で介護保険サービスを展開しています。
介護保険サービス利用ご検討の際は、「そよ風」公式サイトをご覧ください。

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この記事の監修者

株式会社SOYOKAZE
事業統括本部部長(拠点サポート部署)
渡邉 祐貴
介護福祉士・介護支援専門員


介護現場に10年従事し管理者、生活相談員、計画作成担当者など様々な役務をデイサービス、ショートステイ、グループホームで経験。介護福祉士、介護支援専門員等の資格を取得し、介護の専門性を磨く。
その後、現在の役職となり介護業界での経験は約20年。
現場の感覚を忘れずに、課題や問題点を抽出し、その対策に日々取り組んでいる。

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