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そよ風が教える介護の基本

ミンナノミライは介護施設「そよ風」を展開する株式会社SOYOKAZEが
運営しています。みんなの介護の未来を一緒に考えるためのメディアサイトです。

介護の基礎知識

介護で退職するのは待って!知っておきたい制度・介護離職のリスク

「親の介護が始まったら仕事はやめなければならないのだろうか。」と不安に感じている方はいらっしゃいませんか?

親の介護状態や金銭、家族の都合でどうしても辞めなければいけない人もいると思いますが、少しでも働き続けたいという気持ちがあるのであれば、できる限り介護離職はしない方がいいです。

見えない不安に押しつぶされ、思わず退職の道を選びたくなると思いますが、近年は介護をしながら働き続けられるように様々な制度があったり、状況に合わせた介護サービスの利用ができたりなど、介護をしながらでも働き続けることができる可能性が広がってきています。

そこでこの記事では、

  • 介護をしている人の就業状況
  • 介護を理由に退職した場合のリスク
  • 介護と仕事を両立するための制度
  • 介護を理由に退職する前にできること

についてご説明いたします。

この記事を読めば、介護と仕事を両立するための知識をえることができ、介護を理由に退職することなく仕事を続けることができるようになるでしょう。

※当該記事に関する個別のお問い合わせは受け付けておりません。また、記事中の触れられている法的見解についての責任は一切負いかねます。所管の自治体窓口または弁護士等の専門家にご相談下さい。「そよ風」のサービスに関してのお問い合わせや不明点は、お問い合わせフォームより受け付けております。

1.介護をしている半数以上の人が働きながら介護をしている

第1章

総務省が5年ごとに実施している、国民の就業及び不就業を調査する就業構造基本調査の平成29年調査結果によると、平成28年10月~29年9月の1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した者は9万9千人ほどいるという結果がでています。

しかし15歳以上人口で介護をしている者627万6千人のうち、有業者は346万3千人と半数以上の人が働きながら介護をしているという調査結果もあります。

約10万人近くの人が介護理由で退職しているということから、どうしても「退職」という選択をせざるをえない人がいるのも確かですが、一方で介護をしている半数以上の人が働きながら介護をしているという結果から、工夫次第では仕事を続けることができる可能性があるということもわかります。

1-1 介護をしている人の有業率は女性よりも男性の方が高い

就業構造基本調査結果では、介護をしている者について男女別の有業率もでていますが、男性は65.3%、女性は49.3%と女性よりも男性のほうが有業率が高い結果となっています。

夫婦間で介護をどちらかが担うとなった時に、一般的に収入が低い可能性が高い女性のほうが、仕事を辞めざるをえないという状況が少なくないようです。

<5年前の調査結果と比較すると女性の有業率は「70歳以上」を除いてすべての年代で上昇している>

介護をしている者の有業率の割合は、性別で比較をすると男性よりも女性のほう方が低いですが、女性の有業率は、平成24年の結果と比較すると「70歳以上」を除いてすべての年代で上昇している、という結果もでています。

・制度の充実により退職をする人が減った
・女性の社会進出が進み、男女間の年収の差が縮まってきている
など様々な理由が考えられますが、介護を担うイメージのある女性でも働きながら介護をすることができるようになってきているのです。

1-2 介護をしている人の年齢別の有業率は40~50代が最も高い

介護をしている者の年齢別の有業率は、男性は55~59歳、女性は40~49歳が最も高くなっています。親の介護がおおよそ70~80代ぐらいで始まるということを考えると、40~50代はちょうどその子世代にあたる年代です。

40~50代は会社において上のポジションに就いている人も多いですが、そんな中でも介護と仕事を両立している人が多くいるということがわかります。

2.介護を理由に退職した場合の3つのリスク

第2章

介護をしながら仕事を続けている人が多くいるとはいえ、どうしても自分が介護をする立場になった場合、

  • 介護に集中するため
  • 仕事による心身の負担を軽減するため
  • 会社の人に迷惑をかけないため

などの理由から、退職をしようと考える人も多いと思います。しかし介護を理由に退職した場合、多くのリスクが伴うことを事前に認識しておく必要があります。

リスク1:収入がなくなることによる金銭面の問題

介護は病院代など想像以上にお金がかかりますし、生活費も今までと同様にかかってくることを考えると、収入が全くないのに、支出のみ増えていくという状況が続きます。

退職時に多くの貯蓄がある人でも、仮にお金に余裕がまだまだあったとしても、気持ち的に「このままのペースでお金が減っていって大丈夫だろうか。」という不安にかられることもあるでしょう。

介護は将来がよめない分、収入がなくなるという状況は大きなリスクといえます。

リスク2:復職が難しくなる

仕事から離れる期間が長くなればなるほど働く意欲が低下し、新たな職につかないという人もでてくるでしょう。また退職後に仮に別の会社に再就職したとしても、

  • 介護に支障がでないペースで働く
  • 年代的に転職先が限られる

などの理由から収入減になる可能性が高くなってしまいます。

リスク3:社会から孤立することによる精神的負担

仕事をしていた時は会社の人など多くの人と関わりますが、退職をすると家族など関わりを持つ人が限られ、社会から孤立したような気持ちになってしまうことが考えられます。

それだけでなく介護疲れによる精神的負担が増え、介護うつなどになる危険性もあります。

3.退職する前に知っておきたい仕事と介護を両立するための制度

第3章

介護を理由に退職する人が多いため、国は働きながら介護をする人をサポートする「育児・介護休業法」という法律を定めています。

介護と仕事を両立させるための制度として

  • 介護休業
  • 介護休暇
  • 短時間勤務等の措置
  • 所定外労働の制限
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限

などが定められています。
(上記のほか、不利益取り扱いの禁止やハラスメント防止措置等についても定められています。)

ひとつずつ紹介していきます。

※掲載内容は2021年8月時点(執筆時点)の内容です。

3-1 介護休業【介護と仕事の両立のための体制づくりにおすすめ】

労働者が要介護状態にある家族を介護するため、長期的に休みを取得できる制度です。
※要介護状態とは:負傷、疾病または身体上、精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得することが可能。
長期休みが取得できるため、「介護と仕事の両立のための体制づくりの期間」として利用するのがおすすめです。

●対象となる労働者
  • 同一の事業主に1年以上雇用されている全従業員(雇用形態は関係ありません。)
  • 介護休業取得予定日から起算して、93日を経過する日から6カ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

※労使協定を締結している場合、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者や、申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者については対象外です。

●対象となる家族
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 子 ※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ。
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
●申請方法

介護休業は開始予定日と終了予定日を決めて、開始日の2週間前までに会社へ書面で申請します。申請書のフォーマットは会社によって異なりますのできちんと確認し、会社のルールに従って申請しましょう。

●介護休業中の賃金について

賃金については法的な定めはありませんので、会社の規定に従うことになります。会社によっては無給の場合もありますが、介護休業期間中でも社会保険料・住民税の支払いは発生しますので注意が必要です。

なお雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす方であれば、介護休業給付金が支給される場合があります。

<介護休業給付金について>

給付金の目安:休業開始時賃金日額✕支給日数✕67% ※非課税

給付金の目安は上記となりますが、介護休業期間中に、有給休暇や手当などの給与を支給されている場合、その金額によっては支給額が減額、支給されないこともあります。

また支給金額には上限があります(令和2年8月1日時点 336,474円)。

支給条件は、「介護休業開始日の前の2年間に、雇用保険に12カ月以上加入していること」という条件があり、有期契約社員については別途要件が定められているので確認が必要です。
※介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間で、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と数えます。

申請は介護休業が終了してからとなりますが、会社が手続きを行う場合が多いですので、会社の担当部署に事前に確認しておくとよいでしょう。

3-2 介護休暇【通院付き添いなど短時間の用事があるときにおすすめ】

労働者が要介護状態にある家族を介護するため、短期休みを取得できる制度です。
※要介護状態とは:負傷、疾病または身体上、精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

対象家族1人につき1年度に5日まで、2人以上の場合は10日まで取得することが可能で、1日または時間単位での取得ができます。そのため通院の付き添いや要介護者の体調不良、ケアマネジャーとの面談など「突発的な用事や短時間の用事」に利用するのがおすすめです。

●対象となる労働者

対象家族を介護する全従業員(日雇いを除く)

※労使協定を締結している場合、入社6か月未満の労働者や、1週間の所労働日数が2日以下の労働者については対象外です。

●対象となる家族
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 子 ※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ。
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
●申請方法

介護休暇は当日、口頭での申請も可能とされています。しかし、会社によっては申請書が用意されていることが多いようですので、会社のルールに従って申請しましょう。

●介護休暇中の賃金について

賃金については法的な定めはありませんので、会社の規定に従うことになります。無給の場合も多いようです。

介護休業、介護休暇についてさらに詳しく知りたい方は「介護休暇とは?介護休業との違い、条件、給付金の有無、注意点を解説」をご覧ください。

3-3 短時間勤務等の措置【会社により制度が異なるので要確認】

労働者が要介護状態にある家族を介護するため、所定労働時間の短縮等ができる制度で、以下のうちいずれか1つ以上の制度を設ける必要があると定められています。
※要介護状態とは:負傷、疾病または身体上、精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイムの制度
  • 時差出勤の制度
  • 介護費用の助成措置

対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上取得可能なので、連続して3年利用することも可能ですし、介護休業の前後の期間に利用するということも可能です。

●対象となる労働者

対象家族を介護する全従業員(日雇いを除く)

※労使協定を締結している場合、入社1年未満の労働者や、1週間の所労働日数が2日以下の労働者については対象外です。

●対象となる家族
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 子 ※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ。
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
●申請方法

会社により制度内容やルールが異なりますので、会社のルールに従って申請しましょう。

●賃金について

会社により変わりますので、会社の規定に従うことになります。

3-4 所定外労働の制限【残業ができない場合は事前に申請】

労働者が要介護状態にある家族を介護するために申請した場合、所定外労働が免除される制度です。

※要介護状態とは:負傷、疾病または身体上、精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
※所定外労働とは:就業規則などで定められている勤務時間を超える労働、いわゆる残業のこと

1回につき、1か月以上1年以内の期間で利用が可能で、回数の制限はありませんが、事業の正常な運営を妨げると判断される場合は、事業主から労働者へ請求を拒むことが可能です。

●対象となる労働者

対象家族を介護する全従業員(日雇いを除く)

※労使協定を締結している場合、入社1年未満の労働者や、1週間の所労働日数が2日以下の労働者については対象外です。

●対象となる家族
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 子 ※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ。
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
●申請方法

開始予定日の1か月前までに会社へ書面等で申請します。

3-5 時間外労働の制限【残業を制限する必要があれば事前に申請】

労働者が要介護状態にある家族を介護するために申請した場合、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働が免除される制度です。

※要介護状態とは:負傷、疾病または身体上、精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
※時間外労働とは:法定労働時間(1日8時間、1週間で40時間)を超える労働のこと

1回につき、1か月以上1年以内の期間で利用が可能で、回数の制限はありませんが、事業の正常な運営を妨げると判断される場合は、事業主から労働者へ請求を拒むことが可能です。

●対象となる労働者

対象家族を介護する全従業員

※日雇い、入社1年未満の労働者、1週間の所労働日数が2日以下の労働者については対象外です。

●対象となる家族
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 子 ※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ。
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
●申請方法

開始予定日の1か月前までに会社へ書面等で申請します。

3-6 深夜業の制限【深夜に働けない場合は事前に申請】

労働者が要介護状態にある家族を介護するために申請した場合、深夜(午後10時~午前5時)の勤務が免除される制度です。

※要介護状態とは:負傷、疾病または身体上、精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

1回につき、1か月以上6か月以内の期間で利用が可能で、回数の制限はありませんが、事業の正常な運営を妨げると判断される場合は、事業主から労働者へ請求を拒むことが可能です。

●対象となる労働者

対象家族を介護する全従業員が対象ですが、下記の労働者は対象外となります。

  • 日雇い
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所労働日数が2日以下の労働者
  • 所定労働時間の全部が深夜にある労働者
  • 次の①~③に該当する介護ができる16歳以上の同居家族がいる労働者

①深夜に就労していない(深夜の就労日数が1か月につき3日以下のものを含む)
②負傷、疾病または心身の障害により介護が困難でない
③産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間以内の者でない

●対象となる家族
  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 子 ※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ。
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
●申請方法

開始予定日の1か月前までに会社へ書面等で申請します。

4.介護を理由に退職する前にできる2つのこと

第4章

前章で紹介した制度利用も介護と仕事を両立するためには必要なことですが、それ以外にも退職をする前にできることがあります。

今回は誰でもできる2つのことをご紹介します。

①介護関連の情報を集め、サービスの利用を検討する

介護関連のサービスは、

  • 定期的な見守りサービス
  • 1日から宿泊利用できるショートステイ
  • 数十分から利用できる訪問介護

など利用する方のニーズに合わせた様々なサービスがあります。

利用には確かにお金はかかりますが、介護保険サービスであれば1~3割程度の自己負担で利用することが可能です。なかにはボランティアによる無料の見守りサービスなどもありますので、思ったよりも気軽に利用することができます。

退職して一切の収入がなくなるという状態よりも、収入を確保したうえで、一部お金を払ってサービスを利用する方が、精神的にも体力的にも負担が軽減できます。

※介護サービスについてもっと知りたいという方は、私たちが運営する「そよ風」公式サイトをご覧ください。サービスごとの紹介や施設検索などができます。

②家族や親族と相談し、協力を求める

もしも身近に家族や親族など相談できる相手がいるのであれば、相談し協力を求めましょう。直接的に介護ができなくても、お金の面など協力してもらえる点が少しでもあれば、負担が軽減できます。

相談できそうな家族や親族がいない場合は、会社の人事担当者や、ケアマネジャーなどの介護の専門家などに相談をするようにしましょう。1人で抱え込むよりも、いろんな人に相談や協力を求めた方が、退職をせずに仕事と介護を両立できる可能性や選択肢が広がることがあります。

5.さいごに

さいごに

いかがでしたでしょうか。

高齢者が増え、介護しなければならない人が増えているからこそ、法律の整備や充実した介護サービスの展開など、働きながらでも介護をすることができるような世の中に少しずつ変わってきています。またリモートワーク推奨など会社独自の制度を整える会社も増え始めたことから、介護と仕事の両立がしやすい環境になってきています。

状況により働き続けることが難しい場合もありますが、退職をする前に、もう一度「最善の選択は何か」ということを考えてみてください。

仕事も介護も、皆に負担がかからない程度に続けていけるといいですね。

※当該記事に関する個別のお問い合わせは受け付けておりません。また、記事中の触れられている法的見解についての責任は一切負いかねます。所管の自治体窓口または弁護士等の専門家にご相談下さい。「そよ風」のサービスに関してのお問い合わせや不明点は、お問い合わせフォームより受け付けております。

<参考サイト>

総務省 平成29年就業構造基本調査

厚生労働省 介護休業制度

厚生労働省 「介護離職ゼロ」ポータルサイト

厚生労働省 支給限度額変更のお知らせ

私たちは様々な介護保険サービスを全国で展開しています。
まずはお気軽に公式サイトをご覧ください。

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この記事の監修者

株式会社SOYOKAZE
事業統括本部部長(拠点サポート部署)
渡邉 祐貴
介護福祉士・介護支援専門員


介護現場に10年従事し管理者、生活相談員、計画作成担当者など様々な役務をデイサービス、ショートステイ、グループホームで経験。介護福祉士、介護支援専門員等の資格を取得し、介護の専門性を磨く。
その後、現在の役職となり介護業界での経験は約20年。
現場の感覚を忘れずに、課題や問題点を抽出し、その対策に日々取り組んでいる。

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